メヘラーブ蔓花草文絨毯

意匠名 : メヘラーブ文 (メヘラービー・エスリーミー)

製作地 : イラン・カーシャーン 

製作年代 : 1950年代

サイズ : 202×133cm

パイル素材 : 羊毛

織り密度 (結び・横×縦/cm) : 8×8

ダラ・コレクション

高度に装飾化されたカーシャーンのメヘラーブ文ペルシャ絨毯である。フィールド全体は、深いミッドナイトブルーの背景に浮き上がるようにアラベスク文様が展開されている。まず、メヘラーブのアーチは、小さな花文の帯によって形作られ、柔らかい輪郭を形成している。コーナー部分はロゼット花文と葉文様が重なり合うという珍しい表現で、文様の密集度を高め、他のフィールド部分との差別化を図っているようだ。左右の列柱も、パルメット花文とそれを包む装飾ブロックの積み重ねで代用されている。花瓶あるいは生命の樹の存在はなく、こちらもエスリーミーのヴァリエーションに富んだ装飾に包まれた大きな花文モティーフが中心軸に沿って上昇し、そこから分岐したエスリーミーが流れるように配され、フィールドの空間を埋めている。そのエスリーミーのうねりの中に、さまざまな鳥たちがその姿態を委ねて収まっている。またエスリーミーの曲線に沿って、花穂が少し抑制された色調で舞い踊っている。このエスリーミーの優美な曲線が、この絨毯の真価を発揮しているのだろう。

 

ボーダーの存在は文様展開よりも、色調バランスに貢献しているようだ。メインボーダーは、パルメット花文とサズ葉文様が交互に配され、蔓文の曲線が周辺を装飾するもので、この背景となっている濃赤色が、フィールドのミッドナイトブルーの対抗色となっている。それにサブボーダーの背景色である濃青色が強烈なコントラストをつくっている。この強烈さが日本の風土との違いを感じさせる。日本の豊かな自然の色彩の中では、生まれない色合いが、イラン高原の広漠とした原野や沙漠の単調な自然景観の中からは沸々と湧き上がってくるのかも知れない。この強烈なボーダーの存在が絨毯にあるいは生命感を与えているように思える。

 

このペルシャ絨毯は、比較的細かい織りで、精確に仕上げられた佳品である。もはや礼拝用絨毯とは程遠く、天国、楽園へのエントランスを文様の魔術で表現したようなペルシャ絨毯である。

 

作品解説

河崎憲一

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