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メダリオン草花文ペルシャ絨毯

意匠名 : メダリオン文 (トランジ) 

製作地 : イラン・マシュハド

製作工房 : アッバース=ゴリー・サーベル

製作年代 : 1950年代

サイズ : 416×300cm

パイル素材 : 羊毛

織り密度(結び・横×縦/cm): 8×9

ダラ・コレクション

このキングサイズのマシュハド絨毯は、サーベル工房で製作されたものである。

サーベル工房は20世紀最高の作と評された絨毯を製作したアムーオグリー工房の流れを汲む工房である。アッバース=ゴリー・サーベル(1901-1977)は、マシュハドにおけるペルシャ絨毯復興の立役者であったアムーオグリー工房の製作責任者として活躍したタブリーズ出身の人物で、工房でも重要な責務を任されていた。アムーオグリー工房はアブドル=モハンマドとアリー=ハーンの兄弟で運営していたが、1937年、兄のモハンマドが亡くなると、歳の離れた弟のアリー=ハーンは製作活動を断念し、約8年後テヘラーンに移り製作を再開したといわれる。アムーオグリーの工房が閉鎖された後、サーベルは自らの工房を立ち上げ、マシュハドにおける絨毯ルネッサンスの2代目世代として、制作活動を続けた。

 

この見事なペルシャ絨毯も、マシュハド・ルネッサンスの水準の高さを誇示できる仕上がりとなっている。ミッドナイトブルーのような濃紺地をベースとした8つの突起をもつメダリオンに、ボーダーの内側にこれもボーダーを形成することになるのか、フレームが設けられ、その内部のフィールドには、マシュハドならではのコチニール特有のクリムスン・レッド(深紅色)がベースカラーに用いられている。ボーダーには再び濃紺と濃赤色の暗色が用いられ、ともに精緻な文様を際立たせている。内側に生じたボーダーには、色とりどりの流麗なモティーフが配され、メインボーダーには、写実的な花文装飾をカルトゥーシュに収めた装飾パターンと八花弁モティーフを取り囲むエスリーミー・モティーフのパターンが交互に配されている。その八花弁モティーフの花弁の1枚1枚の中にまた花卉モティーフを織り込むといった実に精緻な装飾努力が積み重ねられている。フィールドの外の中間フレームは、コーナーやその中間地点で切断され、カルトゥーシュやさまざまな装飾要素が割り込んで、通常のメダリオン文より、遥かに装飾性が高まっている。

 

絨毯上部、アウターガード中央の小さなカルトゥーシュに花柄とともにサーベルとだけ、さりげなく銘が織り込まれている。もうマシュハドでは、このような手の込んだ絨毯は製作されなくなっており、貴重な逸品といえる。

 

解説文

河崎憲一

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