ボテ草花文絨毯

 

製作地 : イラン・マラーイェル

製作年代 : 1900 - 1920年代

サイズ : 185×115cm

パイル素材 : 羊毛

織り密度 (結び・横×縦/cm) : 11×11

 

ダラ・コレクション

マラーイェルは、ハマダーン州の南東部に位置する町だが、このあたり一帯は良質のペルシャ絨毯産地となっている。マラーイェルはハマダーンと隣接するマルキャズィー州のアラークとの中間にあり、両方の特色を混淆させた絨毯も見かける。また、ハマダーンから南のボルージェルドあたりにかけて織られる絨毯は、マラーイェル産として取り扱われることも多い。マラーイェルのすぐ南東には、ジョウザーンやミーシェンという良質の絨毯を産する小さな町があり、この精緻な絨毯もあるいはミーシェンで織られたものかも知れない。

このペルシャ絨毯は、ボテ文がさまざまにアレンジされて散りばめられたもので、縦方向がジグザグとなった六角形の形状で仕切られたフィールドをもつ。このフィールドは、ギザギザの側面をもつ大きな六角形メダリオンと見ることもできるだろう。ボテ文とは、ペイズリー文様の名でよく知られるようになった勾玉のような形象をもつ文様のことである。インドあるいはイラン起源とされるこの文様の歴史は古いが、絨毯に織り込まれるようになったのは19世紀のことといわれる。また、この六角形は、細かい階段状の織りで構成された斜線中心の鋸歯文がその輪郭となっているが、これはよくキリム(ペルシア語ではゲリームgelim)などに見かける図形である。キリムのデザインは、ハツリという間隙が生じるその織りの特性から、それを極力避けるため、斜めのラインで構成される図柄が必然的に多くなる。このギザギザは、そんなキリムの図柄から採用された構図であろう。六角形の内部は、斜めに枝を張った植物が生い茂り、ボテ文やさまざまな花文が配されているようだが、何の文様であるかは判然としない。この当時すでに西洋のさまざまな花文は使用され、渾然としたゴレ・ファランギー(gol-e farangi西洋の花)文が形成されていたと思われる。六角形の外にあるコーナー(ラチャク)とその残余部分(トッレ・ラチャク)も、ボテ文とゴレ・ファランギーを組み合わせたようなパターンが配列されている。

 

このような細かい花文の絨毯もマラーイェルの代表的な意匠となっている。文様は判然とはしないものの、全体としては、精緻で洗練された織物に完成している。ボーダーやガードも然りである。ちょうど古いペルシア錦あるいはケルマーンやヤズドのテルメtermehのような雰囲気が感じられる作品である。織りの密度も細かく、このように古くて良質のマラーイェル絨毯は、価値も高いようだ。

 

作品解説

河崎憲一

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